Webコンサルタントに限らず、対人でビジネスを行う場合には個人、法人問わず起業する必要があります。
もちろん起業しないで行うことも出来ますが、ビジネスとして信用度に大きく関わる上、収益が出た場合は確定申告も行わなければなりません。税務署の方々に突撃されるとかなり大変です(経験はありませんが・・・)。
実際のところ開業した方がお得なことも多いですし、今はまだ起業を考えてなくても今後自分でビジネスを行っていくのであれば視野に入れておく必要があります。
今回は自分の経験と現状から、webコンサルタントの起業にする上で考えておく要点についてお伝えしていきます。
起業する大きな2つの考え
起業する方法としては大きく分けると2つあります。
それは、【個人】か【法人】で起業する方法です。
この2つを簡単に説明すると、
【法人】起業とは、株式会社・合同会社等のように会社を立ち上げること。
【個人】で起業(開業)とは、飲食店や会計士など、個人オーナーとして開業して行うことです。
一人社長として起業して一人で働くことと、個人で開業して一人で働くことは同じように見えても、実質大きな違いがあります。
それは法的に責任や名乗れる名称など色々ありますが、それに関しても比較して説明していきます。
名乗れる名称の違い
起業したら代表取締役って名乗れる?
起業したら、名刺に「○○株式会社 代表取締役 ○○○○」と記して渡したり、自分は会社の社長であることを示したいものです。
ですが、これは【法人】起業した会社の代表やその役割の人しか名乗ることが出来ません。
会社法第7条に「会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。」
とあり、【個人】で起業した個人事業主があたかも自分が「代表取締役社長」であるという肩書きを持ったり、また名乗ること、そして会社でないのに「○○会社」と名乗ったり誤認させるようなことをしてはなりません。
これを破ると100万円以下の過料(罰金)が科せられてしまいます。
個人事業主は基本肩書きは自由なのですが、会社でないのに会社であるかのような誤認を与えるものではあってはならないということです。
なので、私自身は2018年現在は個人事業主として【個人】で開業しているの状態なので、「代表取締役」とか「○○会社」と名乗ることが出来ません。
一般的に個人事業主で行っている人は、肩書に「代表」と書いてますし自分もそうしています。
過去テレビでニュースを見た時に、芸能事務所を経営しているトップの人が良くも悪くもインタビューを受けている時に、隣に会社と名前がテロップで表示されるのですが、その表記が「○○芸能事務所 代表 ○○○○」となっていました。
自分は今まで「芸能事務所を行っているところは会社が運営して、代表取締役と書かれているはずなのでは・・・」という認識とイメージを持っていたのですが、以上のことからその芸能事務所のトップの人は、【個人】で開業していたのだろうということです。
もちろん会社として設立していて、「代表」という肩書きで行っているかもしれないので、一概に全部個人事業主とは言えませんが・・・・そのような視点でテレビとかでも「代表」という肩書きにしていると「ここは個人事業主なのかな~」と思えたりしてきます。
ちなみに合同会社の場合は、株式会社のように取締役会が無いため一般的に「代表社員」という肩書きで行われていますが、それに近い肩書きである「代表」「社長」「代表職務執行者社長」「代表社員職務執行者」「CEO(Chief Executive Officer)」「最高経営責任者」のような肩書きが使われたリしています。
合同会社でも、定款に「代表取締役」「取締役」「監査役」を定めることで「代表取締役」と名乗ることも可能なんですが、 「CEO」とか「最高経営責任者」とかカッコいいので使ってみたいのです。
肩書きや取引き的には【法人】が有利
コンサルティングに限らず企業と契約を取ったりする場合には、【法人】で起業した方が有利だと思います。
法に関すること、資本金、責任の有無において、「登記」を行っている分やはり【法人】の方が信頼性が高いです。
取引する会社によっては【法人】としか契約しないと定めているところもあるくらいですが、だからといって【個人】で契約できないワケではありません。
実際に自分も【個人】で法人の会社と契約させてもらっていますし、大切なのはいかに価値提供を出来るかとも思っています。
会社の新人社員が担当になる場合と、個人事業主でも長年のキャリアがある人ではやはり後者が良かったりしますが、仮に能力や金額が同じであれば、やっぱり【法人】の方が選ばれる可能性も高いです。
起業時の容易さとかかる金額
【個人】で起業(開業)、【法人】で起業するこの2つの場合では、必要な「時間」や「労力」、かかる「お金」が全然違ってきます。
結果からいうと、【法人】で起業する方が手間・時間・お金がかかります。
信用や節税の点でも有利な分、やることが多いです。
法人で起業する場合
法人で起業する、つまりは会社を起こすと時には、各都道府県の法務局で「登記」を行う必要があります。
イメージとしては「子供が生まれたら出生届を役場に出して1人の人間が日本人の住民票に登録されるがごとく、一つの会社が日本に生まれるのでその登録を行います」という感じです。
自分も娘が生まれた時に出生届を出したり、空き家バンクで古民家を購入した時に所有者変更の「登記変更」をしましたが、登記を行うのは色んな資料や手間と法務局への往復などかなり手間です。
会社を登録するために「登記」する方法の詳細は今回省略しますが、簡単に必要な書類や期間、費用は次のようになります。
※有限会社は法令上今から新たに設立は出来ず、合名会社など他にもありますが、今回は「株式会社」と「合同会社」について挙げていきます。
必要書類
●登記申請書
●登録免許税納付用台紙
●OCR用申請用紙or磁気ディスク
●定款
●払込証明書
●発起人の決定書
●取締役の印鑑証明書
●印鑑届書
●就任承諾書
●その他必要書類
内容については割愛しますが、それぞれそれなりに結構やることがあります。
まず仕事をしながらだと、数日で全部終わらせることは難しい内容でしょう。
期間
これらの書類等を首尾よく準備を行ったとして、だいたい2~3週間がかかると言われています。
自分の場合、会社を設立作業をしたことはまだありませんが、空き家バンクで古民家買った時登記に関する知識は0で、司法書士に頼むお金ももったいなかったので、1人で0から全部行いました。
その地域で司法書士に全部やってもらったら20万円くらいかかるって言われたらもう自分でやるしか・・・
ネットで方法を調べて、実際に登記を行う担当地域の法務局で職員にアポを取って確認等を行い、何度も法務局を往復してようやく完了。
おそらく司法書士を雇ったら首尾よく行ったとして、通常1週間くらいの期間がかかるところなのでしょうが、0からやって何度も訂正や調べたりしていたら3週間くらいかかってしまいました。
おそらくですが、会社の設立に関する資料作成や下調べ、どんな会社にしていくかを自分だけで0から行ったとすると倍以上の2ヵ月くらいかかるのではないかと思います。
費用
会社を設立するには「資本金」を設定する必要があります。これは会社を運用していく上での「運転資金」であり、その会社の「体力」とも言って良いです。
この会社のお金の中から、最初は必要経費や給与を設定して出して行きます。
会社法の施行で資本金1円から設立することができますが、登記情報にもその額が記載されてしまうので、あまりに低い金額に設定してしまうのはあまりオススメできません。
仮に取引先等が、契約時の一つの指標としてこちらの会社情報を申請した場合、資本金が1円だと「この会社大丈夫か・・・?」と思われることは間違いないでしょう。
少なくとも20万円~100万円で設定しておきたいものです。
ですが、いくらお金があったとしても資本金を1000万円以上にすると、消費税や色んな成約がかかってくるのでこれもおススメはできません。
資本金だけでもあらかじめある程度準備しておく必要があるんですが、これに加えて設立時に次の費用が必要になってきます。
株式会社の場合
●公証役場に支払う認証手数料・謄本代
→約5万2000円
●定款に貼り付ける収入印紙代
→4万円
●登録免許税
→資本金にもよりますが、最低15万円(資本金×0.7%計算で、15万円に満たない場合でも15万円必要)
資本金が1000万円以下の場合は、基本的に15万円の登録免許税になります。
●その他会社用の印鑑の作成や印鑑証明
→1万円場3万円
以上、すべて合計して「株式会社」を設立する場合約25万円かかります。
合同会社の場合
株式会社と同じ税制や節税の効果を受けることが出来ながらも、同じく法人で「合同会社」で設立する場合は比較的安い費用で済みます。
合同会社で設立する場合は定款への認証が不要なので、認証手数料の約5万円が必要ありません。
その上登録免許税(資本金×0.7%)が6万円に満たない場合は6万円で済みます。
そのため、合同会社は約10万円で設立できるので、株式会社より約15万円も安く抑えれますし、定款の資料作成等も必要ないので、下準備的にもより早く終わらすことも出来ます。
さらに安くする電子定款は有効?
以上で説明した株式会社25万・合同会社10万円の設立費用から、さらに費用を安くすることが出来ます。
それが「電子定款」です。
定款を紙で提出する場合、紙ベースのものには「収入印紙」が必要となるため、株式会社・合同会社ともに4万円の収入印紙代がかかりますが、これをデータとして「電子定款」で作成すると、紙でないの収入印紙が不要になります。
書いてあることは同じなのに、時代の流れもあって本当に変な話ですが現状これで行われています。
しかしこの電子定款。
「Adobe Acrobat Standard」というpdfへ変換するソフトが無ければ3万円以上必要ですし、マイナンバーカードを読み込むICカードリーダライタなど各種必要な上、内容を間違えて提出したりすると訂正にかなり手間。
確認のため法務局の窓口へ足しげく通ったりしないといけません。
仮に全部危機が揃っていたりしてもそれなりに結構手間がかかるので、時間やその他のことを考えると1から揃えたり考えたりするにはエネルギーを使いすぎるので個人的には行いたくありません。
より簡単にする方法としては、「会社設立freee」に登録して「電子定款サポート5000円」で作成することも出来るのですが、これも登録を行わないといけません。
私としては、何度も無い会社設立の機会なので、後々いらない機能や契約や手間に煩わらされたくありません。
収入印紙も必要な経費として割り切って、1回限りその時でスパッと終わらすべく電子定款はしない方向で行きたいと思っています。
株式会社と合同会社どちらが良い?
どちらでも、法人としての税制上のメリットや方式は同じですが、日本においては「株式会社」が今のところメジャーなため、「合同会社」はまだかなり少数派であるように思えます。
ですが、税法上のメリットは変わらず株式会社と比べて煩雑でないところもあるので、かのGoogleも合同会社です。
アメリカの方が合同会社が市民権を得ていると思うので、今後日本でも合同会社の数は徐々に増えていくのではないかと思われます。
法人で押さえておきたい金銭のこと
法人で会社を設立すると、資本金や会社の事業で得た利益は会社のモノとなります。
いくら自分1人で設立したワンマン社長の会社であっても、「自分の会社さん」という【人のモノ】になるのでそのお金を自由に使うことは許されません。
「今月お財布事情厳しいから会社からお金〇〇万円出しておこう~」
と自由には出来なくなります。
自分への会社からの給与や報酬は「役員報酬」という形で最初に金額を決めて支払われる形になります。
そして会社の利益から「法人」という形で税金が。自分個人への報酬から税金が。と別々に取られていきます。
ダブル取りのように(実際にそうなのですが)思えますが、税法上において会社設立して上手くやると節税効果が高いというのも事実です。
ともかく、会社のお金は自分の物であって自分の物でないということを頭に入れておく必要があります。
個人事業主の場合は、この辺結構自由なところがあって、今月必要だな~という時は「事業主貸」という形で事業で得たお金(基本、事業の通帳内のお金)を引き出して使うことが出来ます。
もちろん経理上その記載と管理の必要はありますが、その辺は自由がききます。
個人事業主として開業する場合
自分の住んでいる地域管轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで完了です。
費用は0円。
受付も5分程度で完了します。
個人事業主で開業することは、会社設立の手間に比べると驚くほど簡単です。
これは開業したら1カ月以内に出す必要があり、その事業の名称としての「屋号」を決まっていれば記入できます。
銀行口座の開設もこの屋号で行うことができるので、自分の事業が相手に伝わるようなものにしても良いと思います。だたし上でも書いたように会社法上、会社という表記やそれに類する相手に誤解を与える名称にしないようにしましょう。(おそらく引っかかれば税務署から何かあると思いますが・・・)
あと合わせて65万円の控除が可能となる「青色申告承認申請書」も提出しておくのがベストです。
自分で事業を何か起こすことは物凄いハードルが高そうですが、書類上では意外と簡単だったりします。
一応これで無職ではありません。
もちろんサラリーマンとして働いている最中、副業として開業することもできますのも強いです。
そして、事業が大きくなってきたら「法人成」という形で会社を起こすことも出来ます。
維持の大変さについて
【個人】【法人】ではもちろん通常やるべきことや、コストの面でも違ってきます。
結論からいうと、【法人】の方がお金と手間がかかります。
手間というのは、経理の関係等が個人に比べるとやることが多くなります。
お金面でいうと、法人地方税が最低でも7万円かかってしまいます。
資本金や規模にもよりますが、たとえ売上0円、赤字決算だったとしてもかかります。
個人事業の場合は、赤字や所得がかなり少ない場合は、基本的に事業者個人への所得からの税金になるので、年間の所得(自分へのお金)が0円の場合は税金はかかりません。
ちなみに、青色申告を行ってキッチリと毎年確定申告を行っている場合、たとえ赤字になった年があっても次年度以降にその欠損金分を繰り越すことが出来ます。
前年度100万円の赤字で、今年度300万円の黒字だった場合は、前年度分の赤字である100万円を今年度分の300万円から差し引いて、200万円の売上があったという計算に。
実質今年度は300万円を得たとしても、200万円として計上できるためその分税金等が安く済みます。
青色申告している場合はこのようなメリットもあり、【法人】の場合は平成20年4月1日以降に終了した事業年度の場合は9年、【個人】の場合は3年赤字を計上することが出来ます。
事業開始時は赤字になることが多いので、結構この赤字計上は助けになります。(本来は赤字にならないのが理想ですが・・・)
個人・法人どちらの起業が良い?~まとめ~
これに関しては、以上の様々な状況と個人の状況によって左右されるところがあります。
ですが、Webコンサルタントとして法人相手に幅広く活動していくのであれば、【法人】で起業して活動することをオススメします。
「【法人】とだけしか契約しない。」というところもあるので。
ですが、だからといって【個人】で行えないということは決してありません。
自分自身も個人事業で始めて、法人の会社と契約させて頂き、【個人】だからダメと断られたことはないので致命的なデメリットにはなりません。
【法人】で行う場合は、信頼面や税制的なことにおいても【個人】で行う以上にさらに多くのことを学んでいかないといけないところがあります。
簡単に方向性をまとめるとすれば、
会社を設立する上での資本金や登記登録料、毎年最低でも7万円の地方住民税を払うだけの余力やお金が最初にある場合は【法人】。
初期投資金も少なく、手間やリスクを出来るだけ抑えたい。法人化に向けてまず下積みと勉強を行いたい場合は【個人】事業主から行うというのも良いと思います。
自分の場合は結構急いで開業したいという思いもあり、まだ色々と知らないことが多かったので結果【個人】でスタートしましたが、もし最初の事業を始める上での十分なお金や会社を起こす知識が十分であれば【法人】で行っていたのではないかと思います。
空き家バンクで古民家を購入した時点で結構ヤバかったので。
ですが、そんな状態でも開業できてしまいます。
今更ですが、色んな行動をしてみるものだと思います。公務員時代の過多事務量ルーティンワークで半脳死状態だった時には決して考えたり行動しなかったことです。
長くなりましたが、Webコンサルタントとして【個人】か【法人】で起業を考える際、もしくは他の事業でも起業する際でも参考にしておきたい事項をまとめました。
考えの一つとして頂けると幸いです。